業務上疾病にかかった労働者の離職時の標準報酬月額等が明らかである場合の平均賃金の算定について

被改正通知 業務上疾病にかかった労働者の離職時の標準報酬月額等が明らかである場合の平均賃金の算定について
改正通知 「業務上疾病にかかった労働者の離職時の標準報酬月額等が明らかである場合の平均賃金の算定について」の一部改正について
(令和5年12月22日基監発1222第1号)
通知日 令和5年12月22日
改正日 令和5年12月22日
詳細 業務上疾病にかかった労働者の離職時の標準報酬月額等が明らかである場合の平均賃金の算定について
新旧対象表
別添
改正後全文

改正の背景

平成22年4月12日付で「業務上疾病にかかった労働者の離職時の標準報酬月額等が明らかである場合の平均賃金の算定について」が通達されました。
しかし、賃金台帳等使用者による支払賃金額の記録が確認できない事案において、当該労働者の厚生年金保険の標準報酬月額が明らかであったため、これを用いて平均賃金を算定したところ、当該労働者の健康保険の標準報酬月額もまた明らかであり、これが離職時の賃金額に近似していると考えられる場合には、健康保険の標準報酬月額を用いて平均賃金の算定を行うべきであるから、当該処分が取り消すべきである、として行政不服審査会から答申をうけ、取消の裁決が行われました。

上記の事案が発生したことを踏まえ、当通達について下記の通り改正を行います。

改正の概要

労働者が業務上疾病の診断確定日に、既にその疾病の発生のおそれのある作業に従事した事業場を離職しており、賃金台帳等使用者による支払賃金額の記録が確認できない事案において、標準報酬月額や賃金日額等が明らかである場合について、昭和 50年9月 23 日付け基発第 556 号「離職後診断によって疾病の発生が確定した労働者に係る平均賃金の算定について」の取扱いは、下記のとおりであるので、了知されたい。
また、労働者が、下記に該当する資料を複数提出しており、いずれの資料を基に算定を行うべきか疑義が生じた場合は、当課法規係あて照会されたい。

1,標準報酬月額について

平均賃金の算定の対象となる労働者等(以下「算定対象労働者等」という。)が、賃金額を証明する資料として、任意に、厚生年金保険又は健康保険の標準報酬月額が明らかになる資料を提出しており、当該資料から、労働者が業務上疾病の発生のおそれのある作業に従事した最後の事業場を離職した日(賃金の締切日がある場合は直前の賃金締切日をいう。)以前3か月間(以下「離職した日以前3か月間」という。)の標準報酬月額が明らかである場合は、当該標準報酬月額を基礎として、平均賃金を算定して差し支えないこと。

なお、関係資料から労働者の標準報酬月額等が明らかな場合であっても、当該資料から、労働者の支払賃金額もまた明らかとなる場合には、支払賃金額を基礎として平均賃金を算定すべきであることに留意すること。

2,賃金日額等について

(1)算定対象労働者等が、賃金額を証明する資料として、任意に、労働者が業務上疾病の発生のおそれのある作業に従事した最後の事業場を離職した際(以下「離職時」という。)の雇用保険受給資格者証を提出しており、当該資料から賃金日額が明らかである場合は、当該賃金日額を基礎として、平均賃金を算定して差し支えないこと。

(2)算定対象労働者等が、賃金額を証明する資料として、任意に、離職時の雇用保険受給資格者証を提出しており、当該資料から、基本手当日額のみが明らかである場合は、当該基本手当日額の算定時の基本手当日額表における、当該基本手当日額が該当する等級に属する賃金日額の中間値(当該等級に属する賃金日額が一定額未満又は一定額以上とされている場合には当該一定額)を基礎として、平均賃金を算定して差し支えないこと。

(3)算定対象労働者等が、賃金額を証明する資料として、任意に、離職時の失業保険受給資格者証を提出しており、当該資料から、失業保険金日額が明らかである場合には、(2)に準じた方法で、平均賃金を算定して差し支えないこと。

(4)なお、雇用保険被保険者離職票又は失業保険被保険者離職票は、使用者が自ら支払賃金額について記録した資料であるため、これらの資料から、離職した日以前3か月間の全部又は一部の賃金額が明らかである場合には、当該賃金額を基礎として、平均賃金を算定すること。

3,賞与等について

1,の場合において確認された標準報酬月額に、通貨以外のもので支払われた賃金であって平均賃金の算定の基礎とされないものが含まれている場合又は、2,の場合において確認された賃金日額若しくは賃金額(以下「賃金日額等」という。)に、臨時に支払われた賃金、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金若しくは通貨以外のもので支払われた賃金であって平均賃金の算定の基礎とされないものが含まれている場合には、1及び2にかかわらず、当該標準報酬月額又は賃金日額等を平均賃金の算定の基礎とすべきでないこと。

ただし、臨時に支払われた賃金若しくは3か月を超える期間ごとに支払われる賃金の額又は通貨以外のもので支払われた賃金であって平均賃金の算定の基礎とされないものの評価額が明らかである場合には、これらの額を当該標準報酬月額又は賃金日額等から差し引いた額を基礎として、平均賃金を算定して差し支えないこと。
なお、標準報酬月額及び賃金日額に反映される賃金の範囲については、別紙を参照のこと。

4,賃金台帳等の一部が存在している場合について

離職した日以前3か月間の一部についてのみ賃金台帳等使用者による支払賃金額の記録が存在している場合で、同時に、算定対象労働者等が賃金額を証明する資料として、上記に該当する資料を任意に提出したことにより、当該労働者の標準報酬月額又は賃金日額が明らかである場合には、賃金額が賃金台帳等によっては確認できない期間について、当該標準報酬月額又は賃金日額を基礎として賃金額を算定した上で、平均賃金を算定して差し支えないこと。

5,算定対象労働者等への教示について

賃金台帳等使用者による支払賃金額の記録がない事案においては、算定対象労働者等に対して上記取扱いを教示し、算定対象労働者等が上記に該当する資料の提出を希望する場合には、資料の入手方法(資料の請求先となる行政機関など)について教示すること。

反映される賃金の範囲

平均賃金
算定事由発生日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除して算定
労働基準法第12条
標準報酬月額
毎年7月1日に使用される事業所において同日前3か月間に受けた報酬の総額をその期間の月数で除した額に基づき、等級区分によって決定
健康保険法第41条
厚生年金保険法第21条
賃金日額
被保険者期間として計算された最後の6か月間に支払われた賃金の総額を180で除して算定
雇用保険法第17条
臨時に支払われた賃金含まれない含まれない含まれない(※)
3か月を超える期間ごとに支払われる賃金含まれない含まれない含まれない(※)
通貨以外のもので支払われた賃金一定の範囲(法令又は労働協約に定めがないもの)に属しないものは含まれない)労働の対償として受けるものであれば含まれる含まれる
(食事、被服及び住居の利益の他、公共職業安定所長が定めるところによる)

※失業保険法(昭和22年法律第146号)及び昭和59年7月31日以前の雇用保険法においては、賃金の総額に、臨時に支払われる賃金および3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を含めて賃金日額が算定されていた。

改正による影響

「業務上疾病にかかった労働者の離職時の標準報酬月額等が明らかである場合の平均賃金の算定について」の通達内容に、一部改正が行われます。
人事担当者は改正事項について十分に留意し、従業員からの質問があった場合等、適切に対応をおこなってください。

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